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限定承認とは

「相続」と端的に言っても、その入り口の制度には主に3つあります。

それは、「単純承認」、「限定承認」、「相続放棄」です。

この3つの中でも、最も多いのは「単純承認」でしょう。

「単純承認」とは、要するに被相続人の権利義務を全て承継しますという相続人の意思表示のことです。

また、「相続放棄」はその逆で、被相続人の権利義務を全て放棄する意思表示(一定期間内に裁判所への申述が必要です。)を指します。

これもある程度聞きなじみのある制度かと思います。

しかし、本題である「限定承認」はあまりご存じでない方も多いのではないでしょうか。

「限定承認」とは、被相続人のプラスの財産(不動産や動産、預貯金、株式等)の範囲内でのみマイナスの財産(負債等)を返還する責任を負い、プラスの財産の額を超えてはマイナスの財産に対する責任を負わない(責任を負わないだけで負債は残ります。返す義務がないだけ。)という相続人の意思表示のことです(こちらも、相続放棄同様、一定期間内に裁判所への申述が必要です。)。

これだけを聞くと、もしもプラスの財産が多い場合には、余剰分を相続できるし、マイナスの財産が多い場合でも、被相続人のプラスの財産で返せばいいから、便利な制度にも思えます。

ですが、実際には、ほとんど利用されていません(平成30年度司法統計では、全国で709件。一方、相続放棄は215,320件。)。

「限定承認」のメリットやデメリットは簡単にまとめると次の通りです。

メリット
・相続財産の内プラスとマイナスのどちらが多いのか判然としない場合でも、負債を負いすぎなくて済む。
・相続放棄と違い、残したい財産を承継することができる。
・相続放棄と違い、後順位の相続人に負担がかからない。

デメリット
・税金がややこしい(みなし譲渡所得税というものが関わってくる。)。
・相続財産を手放したくない場合、先買権という権利を行使して、その財産を買い取らないといけない。
・相続人が複数いる場合に、相続人全員で手続きを行わないといけない。
・相続人が複数いる場合に、誰か一人でも法定単純承認をしてしまった場合、限定承認が出来なくなる。
・手続きを行うのに期間制限がある(自己が相続人であることを知ってから3か月以内。)。

以上のように、限定承認は、制度として分かりにくい(条文数も922条から937条の僅か16か条しかありません。)との認識が強いからか、あまり利用が進んでいないようです。

しかし、被相続人にプラスの財産とマイナスの財産がどれだけあるのか不明な場合や負債はあるがどうしても残したい財産があるような場合には活用の余地があるように思います。

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