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配偶者居住権についての補足(制度趣旨について)

先日、2回にわたって配偶者居住権の制度の概要と対抗要件である登記手続きについて当ブログにアップしました。

その時の記事についてはこちら→「配偶者居住権①」、「配偶者居住権②

その時、特に「配偶者居住権①」の記事の中で、私は、配偶者居住権がこの度の相続法改正の目玉の一つであると申し上げました。

そう書いたのには、もちろん理由があり、改正民法の法務省の立案担当者が執筆した書籍である「一問一答シリーズ 新しい相続法 平成30年民法等(相続法)改正、遺言書保管法の解説」(商事法務)に改正理由についてそのように書かれていたからです。

しかし、最初にこれを読んだ時から、どこかしっくりこない所が私の中ではありました。

「配偶者居住権って本当に必要か?」
「別に今まで通りでも大丈夫ちゃう?」(そんなに現実問題としてひっ迫してないよな?)

このもやもやした思いは、配偶者居住権の制度を条文をたどって勉強してみても解消されませんでした。

しかし、ある時、ある論文を読んで「はっ!そういうことか!」と思ったので、ご紹介します。

それは、九州大学大学院法学研究院の七戸克彦教授執筆の「配偶者居住権:ある皮肉な物語」という論文です。

九州大学学術情報リポジトリ「配偶者居住権:ある皮肉な物語

私が理解した内容は要するに以下のようなことです。

まず、今回の民法(相続法)改正のきっかけとなったのは、平成25年9月4日最高裁大法廷の非嫡出子相続分差別違憲決定です。(←これがきっかけでなぜ配偶者居住権の創設に至るのかも謎でした。)

この違憲決定が出たことで、民法第900条4号但し書きの削除が検討されていましたが、その際保守派の議員が次のようなことを言ったそうです。

「最高裁はなんちゅうことゆうてくれよってん!非嫡出子の相続分を嫡出子と同じにするやと!?ハレンチな!!日本は法律婚主義やねん!結婚もしてないやつとの間の子を助けるなんて筋違いじゃ!伝統的な夫婦制度や家族制度を維持するような制度を作らんのやったら、民法第900条4号但し書きの削除なんか認めるかい!!」(←筆者がだいぶ加筆修正。要するに「法律婚の軽視と伝統的な夫婦制度及び家族制度の崩壊が懸念された」ということです。初めからそう書けよと言われそうですが、そう書かないのが私です(笑)。)

ということで、民法第900条4号但し書きを削除する法案を通すため、配偶者保護の観点から(法律婚を重視する)新しい制度の創設が考えられたのでした。

その一つが配偶者居住権です。また、20年以上連れ添った夫婦の一方である被相続人が配偶者に対して居住用不動産を遺贈や贈与したときは、相続財産への持戻しを免除する規定が設けられています。

他にも、配偶者の相続分を増やしてはどうかと検討されましたが、これは見送られました。

そんなこんなで、配偶者居住権は目玉の一つというわけです。

このことは、資格受験指導をしている伊藤塾が開催している「明日の法律家講座」で岡口基一判事が講演を担当された際にも少しだけお話しされていました。(気になる方はバックナンバーがあるので、ご覧ください。https://www.itojuku.co.jp/itojuku/afterpass/kouenkai/tomorrowlaw/bn/tokyo286_190803.html 伊藤塾HPより)

以上、私のもやもやがスッキリした話でした。

追記

↑明日の法律家講座のバックナンバーはWEB講座を受講しているなど、マイページログインができる方が見ることができるものでした。すみません。

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